9mmの淡水ケシと2mm未満のハーフ・パール
真珠養殖の過程で偶然に生まれるシード・パール。
その誕生のメカニズムはナチュラル・パールと同じである。いわば養殖真珠母貝の中から生まれる天然真珠。
中国淡水真珠から出るシード・パールの多くはインドに送られ、穴あけ・漂白の後ケシ連として輸出されていると聞く。
19世紀のヨーロッパでジュエリーに多用されたハーフ・パール。
希少性の高いシード・パールから作られた小さなハーフ・パールは王侯貴族に好んで使われ、数多くのジュエリーが創られた。
20世紀に入ってから近代真珠養殖の技術が発展し、真円真珠が容易に手に入るようになると半円真珠が姿を消してしまう。
素材の入手が難しく、半分に磨り、ジュエリーにセットするためには高度の技術が必要だったはずの小さなハーフ・パールはあまりにも生産効率が低く、
大量供給が可能になった丸くて大きい養殖真珠に淘汰されてしまった。そして1世紀近くが過ぎた現在、ハーフ・パールを使ったジュエリーは、
今ではアンティーク・ジュエリーとして価値を見出されている。
19世紀のヨーロッパのハーフ・パールは東方から運ばれた淡水産のシード・パールを加工したらしい。
真珠の生産地やその入手ルート、半分に切って、セッティングするまでの加工技術…等々、想像するだけでも楽しい。
極めて少量ではあるものの、今でもハーフ・パールが作られ、ハイジュエリーに使われていると聞くが、市場で眼に触れることができるのだろうか?
現在圧倒的な占有率で取引される真珠ジュエリーはネックレス中心の養殖真珠である。
100年近くハーフ・パールに換わって真珠の主役を務めてきた丸く大きく、コストパフォーマンスの高い養殖真珠は、
過剰供給、品質低下、化学処理などさまざまな問題が複雑に絡み、玉石混合の状態があることも否めない。市場はかなり混乱している。
真珠の評価基準はチョーカーの品質を中心にまとめられているが、それが揺らいでいるのである。
かつてナチュラルパールしかなかった時代、真珠は主にジュエリーセッティングに使われ、
真珠に対する評価基準が現在と大きく異なっていたはずである。今もう一度真珠に対する価値観を見直すときでもある。
1世紀近く姿を消してしまったハーフ・パールはジュエリー素材としてむしろ鮮度の高い商材として期待できる。
過去の技術の再現だけでなく現代的な使用方法が生まれることを期待したい。
弊社は中国淡水真珠のシード・パールの中から高品質の珠を厳選し、ハーフ・パールに加工して2003年秋から販売を始めている。 |