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真珠に彫刻

宝石からファション素材までを含める商材になった真珠
 
自然界は他の宝石にない輝きを持つ真珠を育み、 人々は真珠に宝石として高い価値を見出しました。人間は真珠養殖に成功し、天然の真珠よりも大きくて丸い養殖真珠が創り出され、 その美しさに心を動かされた人々は身に着けたいと思う衝動に駆られます。真珠の養殖技術は進歩を続け、 高価な宝石ではあるものの真珠が庶民でも何とか手の届く宝石になって久しいと思います。 利潤を得るための「コストダウン」と「大量販売」、 この競争原理は真珠ビジネスを例外とせず、最近は養殖期間の短縮し、化学薬品による増光処理で見た目の美しさが引き出され、 見栄えの良い真珠がより購入し易い価格で大量にマーケットに投入されています。宝石としての希少性が薄れるのは仕方のないことですが、 真珠層が薄くて照りがなくなる、あるいは淡水真珠のように厚い真珠層持っていても化学薬品によるダメージで購入後すぐに劣化してしまう様な粗悪品が増え、消費者の信頼を失いつつあるのはとても残念です。悲しいかな丁寧に選別・加工された良質な珠でも、ビジネスのなかでは耐久力に問題のある低コストの安価な珠にしばしば押しつぶされてしまうのです。プロから見れば大きな違いがあっても消費者が見た目に変わらなければ仕方ありません。価格の安いものが売れます。もう一つ別の角度から見れば、宝石・高価格・フォーマルだった真珠がコスチュームジュエリーやシルバージュエリーにも気安く使えるファッション素材に脱皮したのかも知れません。

真珠彫刻を発案
 初めて真珠に彫刻してみよう思ったのは10年近くも前のことです。産地で淡水真珠の珠の選別をしながら、時々見つけるとても綺麗な真珠、残念ながら目立つ場所にキズがある珠がその中にあるのです。何とかこの珠を活かしたいと思うことが時々ありました。もともと半貴石のカットやカービングが本業でしたから、イメージはすぐに出てきました。カットをすればこの「勿体ない珠」は「素晴しい珠になる」自信はありました。残念ながら当時の大珠は高価格で欠点の有無にかかわらず絶対量も少なく流通に乗せるのに問題がありました。珠の買付・加工・選別の仕事に追われているうち数年間が過ぎ、いつの間にか真珠彫刻への思いは消えていました。その後しばらくして大珠の生産量は大きく増産しました。数年間の間の価格の暴騰と下落を経て、ここ1〜2年淡水真珠の大珠の価格は落ち着き安定供給の時代に入りました。真珠彫刻してみたら?以前は欠点隠しが動機でしたが、今度は珠の良さをアピールすることが出発点でした。珠に相当なリスクのかかる化学処理をして光沢を出す珠が市場を支配しています。行き過ぎた処理をしていれば見た目のテリが良くてもカットの後真珠層が剥離しやすく、珠の劣化をより加速するでしょう。後のことを考えない業者ならそこまでやるかも知れませんが…。真珠層の薄い有核真珠では核と真珠層の間の断層が剥離する可能性が高くカービングは困難でしょう。

真珠彫刻の困難
 実際に彫刻真珠の加工を始めると幾つかの問題がありました。腕の良い石の研磨師でも真珠は初めて、なかなかこちらが思うようなカットをしてくれません。ベテランのカッター達はどうしてもこれまで親しんだ石の彫刻手法から抜け出せず、必要以上にテリのある真珠の面に刃を入れてしまいます。確かに綺麗な真珠の面に刃物を入れるのですから今さら何を言うのかと彼らに思われても仕方がありません。当初は欠点をカバーするための彫刻が発想の出発点でした。カットを始めて気がついたのは素材の調達です。問題は珠の欠点がいつも同じ場所にあるわけではないので、1個1個違ったカットの形を考えなければなりません。珠ひとつひとつをカッターと相談しながらでは生産になりません。市場の反応も良好で一定の数量を確保しなければなりません。同じような欠点を持つ珠を探していたのでは生産が追いつきません。

特許の申請
 「この真珠バラ、香港や日本の大手業者に真似され、最後は向こうが本家みたいな顔して売られたら悔しいですね…特許でもとったら…」 という社内のスタッフのつぶやき…。一寸の虫にも5分の魂。確かに我みたいな零細企業でも商品開発に努力しているのです。 特許申請にどれだけの手間と費用がかかるのか…。経営者としては作業量と懐の涼しさについ思考が働いてしまう。 ともかくお取引先を守るためにも「何とか特許を」と言う気持ちになりました。特許事務所に出す資料の作成には2ヶ月かかり、 弁理士さんも「真珠」には相当苦戦したようです。特許申請番号No.2004-31367、2004年10月28日特許申請は無事終わりました。 申請を決心する際にさまざま角度から助言をいただいた赤松氏にはとても感謝しております。「大変ありがとうございました。心からお礼を申し上げます。」 

 

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